Part1:開発の経緯(5分39秒)
       
Part1 Part2 Part3 Part4
開発の経緯
5分39秒
完成までの工程
13分54秒
開発中/完成後
6分11秒
見てもらいたいポイント
5分20秒

この夏、アキレス、キングレコード、ABC-MARTの3社共同プロジェクトとして開発されたのが、オリジナルのスニーカー“EVA-supernova01”。話題の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の公開を記念してはじまったプロジェクト、「足元補完計画」とは、実際にはどんなプロジェクトであったのでしょう?今回、同アイテムのデザインを担当した児玉裕一氏(映像クリエイター)とアキレスの開発担当者、鈴木章央氏(商品企画開発部)に話を伺いました。

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Q. 商品の開発にいたった経緯は?

児玉:
僕は、普段は映像クリエイターをしています。でも、どうしてか、このときはDVDのジャケットをつくるという話を、キングレコードさんから持ちかけられ、それがことの発端だったんです。内容は、「ヱヴァンゲリヲンの映像をリミックスしたものをDVDとして出したい。」そういう話だったんですね。そのときに、まず僕がしたのは、リミックスということに因んで、ヱヴァンゲリヲンのプラモデルを買ってきて、説明書を見ないで組み立てたら、どうなるかということでした。そうして、しばらく遊んでいたら、何だかスニーカーのパーツみたいに見えてきて、それでさらに、よくよく考えてみたら、ヱヴァンゲリヲンの体って、すごくスポーティーだなぁと思えてきたわけです。そこから、さらに、ヱヴァンゲリヲンの絵を正面、横、後ろからずっと眺めていたら、まさにスニーカーの絵が浮かびあがってきたわけです。それで、実際にそれをリアルなデザイン画に起こしてみて、こういうスニーカーのジャケットができあがったんですね。それで、キングレコードの方とお話をしているときに、「これ、実際に商品化できたら面白いね」という話になって、その場でたまたま「アキレス」さんの名前が挙ったわけですが、その「アキレス」という名前に何かピンと感じるところがあって、それで鈴木さんにお会いしにいったというわけなんですね。

鈴木:
児玉さんが訪ねてきて、実は当社にはヱヴァンゲリヲンのファンが私を含めて数名いたんです。なおかつ、ビジネスとしても宣伝効果などを加味したら、なかなか悪い話ではありませんでした。それから、丁度、会社としては、大人をターゲットにしたアニメ・キャラクターの商品開発もできたらいいなぁという構想もあったんです。だから、割と、すんなり、安易な気持ちでスタートさせることができたプロジェクトではあったんです。

児玉:
自分としては、とにかく、既にできあがった完成図があったから、これを立体物にするにはどうしたらいいのかだけが頭にあったわけです。だから、最初は、履けなくてもいいから、この形や質感、ボリューム感を大事にしてほしいというリクエストを出していたくらいなんです。履けない靴、フィギュアとしての靴というものがあってもいいだろう、そう最初は考えていたんですよね。

鈴木:
もちろん、当社の場合、シューズメーカーなので、履けないものをつくることはできかねます。という返答をするしかなかったんですけど、児玉さんとのせめぎ合いの結果、履く製品として開発させてもらえることになったわけです。 

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※ヱヴァンゲリヲン 初号機

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※「NEON GENESIS EVANGELION_remix」DVDジャケット  shop btf

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※“EVA-supernova01”完成イメージ


Q. 数段階のプロトタイプをつくっていく過程では、苦労することも多かったのでしょうね。

児玉:
何よりも大変だったのは、やはりシルエットをいかに再現するかということでしたね。それをするために、全体の形を後ろに下げるということをやったりしました。でも、そのシルエットを保つ意図が中国のスタッフには伝わらなくて、「本当にこれでいいの?」って何度も聞き直されたりして、説明するために発砲スチロールで模型をつくったりして大変でした。それでも実現できたのは、僕自身が靴づくりに対しての基本的な知識がまったくないところでやっていたからかもしれないですね。

鈴木:
ボリューム感、質感を出すというのも、なかなか大変な苦労をともないまして、つま先のパーツとしてゴム製のパーツを使えるということがわかったときに、ようやく問題が解決した感じです。

児玉:
自分のやり方は、プロトタイプが出来上がる度に、写真に撮って、それでパスをつくって、ここの部分をもっとボリューム感だして立体的にしてほしい、ここをああして欲しいというリクエストを相当に出していたので、アキレスのスタッフには、面倒臭い人だなぁと思われていたんじゃないでしょうか(笑)。「縫い目を全部なくしてくれ」とか、「歩いたらガシンガシンと音が出るようにならないか」とか、「エントリープラグを挿せるようなものをつくって欲しい」とか、かなり無理難題を押し付けていたような気もします(笑)。

鈴木:
児玉さんのイメージを工場に伝えるのが難しかったり、あとは、私自身が間違って解釈をしていたりという誤解があったりしたので、そういうところは試行錯誤が必要となったところだったと思います。特に、縫い目は、構造上どうしても必要だったので、そこを擦り合わせるのもなかなか大変ではありましたね。最初は、2本あった縫い目を1本にしたりという工夫もしていますし、他にも、接着剤でつけていたパーツもあったんですけど、試験を繰り返すと1000?2000回履くだけで、どうもはがれてしまったりしてダメになってしまう部分をクリアして耐久性を増すために、当初使っていたゴムよりももっと柔らかいゴムを使うことで長時間の使用にも耐えられるものにしたり、いろいろな工夫をしています。

児玉:
そうやってだいぶ詰めていったら、履きやすくもなったんですよね。それから、つくっていく過程でわかることも結構あって、このマジックテープで留めてベリベリとはがす箇所も、最初は全然イメージしてなかったので、できあがってみると、「ロボットみたいで、いいなー」って感じでした。それから、もうひとつイメージしていなかったのは、上から見た形でしたね。

shhop btf ※児玉氏の指示書 その1

shhop btf ※児玉氏の指示書 その2


Q. このプロジェクトに対しての社内的な反応というのはどうだったんでしょうか?

鈴木:
このプロジェクトは、元々、会社としてあった構想とも合致する部分があって、最初から是非参加したいという雰囲気でしたね。 実際に、完成品を社内で見せたときには歓声すらあがったくらいだったんです。 ただ、「この仕事は頑張ってもらっていいけど、普段の仕事もちゃんとやってね」と、担当の私が、このプロジェクトにあまりに入れ込みすぎることに対してのけん制はありましたね(笑)。 でも、アキレスとしても、これは革新的なプロジェクトだったんです。


Q. 最後に完成してみて、何か特別な想いのようなものは感じたでしょうか?

児玉:
まず、何よりも最初はただDVDのジャケットをつくるという話から、こうして靴をつくるというミラクルにまで発展しているということが、純粋に嬉しいですよね。それから、やっぱり、パッケージする箱ができあがってみると、鈴木さんとアキレスのスタッフの方々には、本当に相当いろいろ頑張ってもらったなぁとしみじみと感じましたね。それから、実際に履いてみると、「ああ、本当に履けるものとして、この靴をつくったことは正解だったなぁ」と思いました(笑)。自分は、この靴をヱヴァンゲリヲンのコアなファン用のレア・アイテムとしてだけではなく、ファッション・アイテムとして、とらえて欲しいなぁと思っていたりします。

鈴木:
自分としては、このプロジェクトを、この製品ができたことで終わりにするのではなくて、弐号機、参号機と次の製品もつくっていきたいと思っています。そしてこのプロジェクトをきっかけに、大人用のアニメ・キャラクターのラインというのがひとつできあがったら嬉しいなぁと思っています。