今回、@btfに集ってくれた3人は、この夏に@btfで開催されていた『EVA NOS』展の写真家、佐内正史さん、「惣流(式波)・アスカ・ラングレー」役の声優・宮村優子さん、そして、佐内さんとともに「CRエヴァンゲリオン」の愛好家であり、照明部チーフを務める野田真基さんです。お話は、佐内さんの「CRエヴァンゲリオン」に対する想いを軸に話は語られて、広がっていきます。のどかに語られるトーク内容ですが、この会話のなかには、写真家の目線、そして、声優の日常が見え隠れしています。
(c)GAINAX・カラー/Project Eva. (c)Bisty
佐内:「対照」レーベルから出したこの写真集『EVA NOS』っていうのはエヴァノスタルジーのことなんだ。なんか懐かしい感じ。デザインもいいよね。
野田:本当にいい色ですよね。
宮村:元々は、どうしてパチンコ台を撮ろうと思ったんですか?
佐内:3、4年前だったかな。打ってみたら、すごく面白くて、はまってしまったんだ。それで、最初は、携帯で画面撮っていたんだけど、”俺、写真家だしな”って思って、6 X 7というサイズの大きなカメラで撮りはじめたんだよ。でも、パチンコ屋の店員がガラスを拭いてくれるようになっちゃってさ。
野田:普通は、店員さんからは「撮影なんかダメですよ!」って言われるはずなんですけどね(笑)。
佐内:なんかプロの方かもしれないって、思われたんだろうね。ガラスの扉を開けてまで拭いてくれようとするから、俺も”あんまり、リアリティがなくなっちゃうから、拭かないでください”とか言ったりしてね。空の青い色とか綺麗でしょ?ちょうど、うつり込みもいいしね。
(c)GAINAX・カラー/Project Eva. (c)Bisty
野田:うつり込みも、狙ってとっているんですか?
佐内:もちろんそうだよ。本当に体力使っているんだよ。打っているだけでも疲れるし、本当は、パチンコだけ楽しみたいんだけどさ。長く、エヴァの台を打っていると、だんだん、撮りたい場面の予兆みたいなものは、わかるようになってくるから、その予兆を感じたら、カメラは片手に準備していますね。
野田:その瞬間に重たいカメラを持ち上げているのが凄いですよね。自分自身がうつり込んでいるのもありますよね。
佐内:はい。まあ、一種のセルフポートレートですね(笑)。パチンコ台の場合、液晶の前にガラスがあって、その先の奥行きというのがある。車の中もそうなんだけど、ちょっと独特なものがあるんだよね。店によってもうつり込みが違うしね。壁に向かって座禅を組んでいるような感じかな。それに、エヴァの台は、綺麗なんだよね。夜景みたいな感じもあるしさ。やっぱりノスタルジーだよね。
野田:そうですね。
佐内:この1シーン1シーンが、思い出になって、懐かしさがあるなぁ。10年くらいしたら、もっとノスタルジーになってさ。あのとき隣りで打っていた野田くんは、今は何しているのかなぁって思ったりするんだろうね。
(c)GAINAX・カラー/Project Eva. (c)Bisty
宮村:でも、パチンコも好きなんですね。
佐内:仕事のあとは、パチンコだね。俺は、NHKの朝の連ドラの「つばさ」でオープニングムービーの写真を撮っているんですよ。それでこの仕事がこの間、クランクアップしたんだけど、ロケ地が川越で、そこに行っても、帰りも、ほとんどパチンコ屋に行って、終わったら、パチンコ屋の前の中華料理屋でビールを飲んで、麻婆豆腐頼んで、”どうしようかな、明日”みたいな感じですね。仕事して、パチンコやって、家帰ってドラクエやって、疲れて寝るみたいな、そんな生活ですよ。
宮村:そうなんですか。でも、この間、うちのお母さんに、"パチンコの台を写真におさめている写真家の人がいるんだよー"って話をして、写真集を見せたら、”随分、変わったことを写真に撮る人がいるんだね”って言っていて、お母さんと朝、その「つばさ」を見てたら、佐内正史さんのクレジットが出てきて、”あ、お母さん、この映像撮っている人が、パチンコの写真集を撮っている人だよ!”って教えたら、母は頭がこんがらがってしまったみたいでした(笑)。パチンコ台の写真とNHKの連ドラがどうしてもつながらなかったみたいです。
佐内:僕にとっては、風景もエヴァも女の子もみんな同じで、変化する瞬間っていうのがあって、ハッとさせられるもの、斜がかかっていない、影がかかっていない、そういう奥の世界を撮りたいんですね。皮をはいだ、コアな部分だけを撮りたいというかね。そういう単純なものって、あんまりないんだよね。だから、エヴァは気持ちよく撮れましたよね。それでも左手でパチンコ打って、右手にカメラを横に構えて、打っているから、すごい疲れるんだけどね。(爆Laugh)
野田:佐内さんの場合、ブレないで撮っているっていうのが凄いですよね。僕の場合、パチンコ打ちながら片手で、ドラクエやっていたりしますよ。
佐内:そう、だから、彼に追いついて、レベル上げていくには、それ以上に睡眠を削らないといけないんだよ。仕事忙しいしね。厳しいよね。今日も徹夜かな、みたいな。今年は、ゲームにはまる年にしようかなって、PSP、Wii、DS、プレステ3ってぜんぶ買いましたからね。小学生みたいですけどね(笑)。でも、知り合いが言ってたんですけど、この歳でゲームはまるといいですよね。小学生のときのように、お母さんに怒られないで済むからね(笑)。
宮村:私も、小学生の頃、ゲームたくさんやっていました。どこでやめていいのかわからないですよね。ずっと延々と続くから。
佐内:パチンコはやらないの? 俺は、普段、撮影現場で人と話しながら仕事をすることが多いから、パチンコのひとりの時間という、ATフィールドみたいなのがたちあがってくる感じが好きなんだけど、ミヤムーは自分だけの時間とかはあるの?
宮村:大学生の頃は、パチンコも友達に連れていってもらって、打っていましたよ。友達に連れていってもらったとは言えども、台と向き合って1対1ですからね。ひとりの時間になりますよね。でも、今、子供産んでからは、トイレ行くのにも子供がついてくる感じだから、ひとりの時間はないですよね。
佐内:ところで、エヴァの劇場版は観たの?
宮村:ずっと観てなくて、この間はじめて友達に連れられて観ました。でも、友達には、”映画館の中に入ったら、映画がはじまったって間違われるといけないから、ひと言もしゃべったらダメだからね”って言われたりしながら観ましたよ(笑)。ずいぶん、シンジがかっこ良くなっちゃってましたね。
野田:そうですね。劇場版では、モテモテでしたね。もっと、ダメで暗い奴だったのにね。
佐内:エヴァって、アニメ自体も内にこもっていくようなストーリー展開だったりするけど、パチンコ台もそうなんだよ。結構、うちへうちへといく。そういうのが極めて写真的な感じがするんだよね。そこに暗闇があって、暗い。自分の小さなな心の部屋みたいなのが広がっている感じがさ。あと、エヴァの台は間がいいだよね。振り向いた女の子のハッとさせる表情とかさ、曲がり角を曲がったら、こんな木が生えていたんだとか、山の緑のグラデーションはこんな風だったんだとかさ。突然の贈り物みたいな感じがあるんだよな。だから、凄く撮りやすかったですね。お客さんからのリクエストもあるから、ミヤムー、台詞いってみようかね。
宮村:じゃあ。”あんた、バカァ?”(笑)。
*『エヴァンゲリオン』に登場する惣流・アスカ・ラングレーの有名な台詞。
私、アントニオ猪木さんが大晦日に108回ビンタするように、108回の”あんた、バカァ?”をやりたいんですよね(笑)。
(c)GAINAX・カラー/Project Eva. (c)Bisty
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