2009年1月17日のbtfトークショーに登場してくれたのは、ふじわらかつひとさん(写真左)、籠谷シェーンさん(写真右)から成るアートユニット、現代美術二等兵です。既成のものを少しだけずらすことで笑いを生じさせるユーモラスな作品づくりを続けてきた彼らの活動キャリアは、実は10年以上にも及ぶものです。その長い歳月の中で、鮮度の高いアイディアはどうやって生まれてくるのか、彼らの話の中にそのヒントを探ってみてください。そして、今回、司会を務めてくださったのは、テレビ東京で放映のアニメ『人形芸人ドント&ノット』で脚本を担当している河井彰一郎さんです。河井さんは現代二等兵の、京都市立芸術大学での先輩、さて、昔のよしみからどんな話が飛び出してくるのでしょうか。
司会:
まずは、現代美術二等兵の結成の経緯を教えてください。
籠谷:僕らは、同じ京都市立芸術大学出身なんです。ふたりとも彫刻を専攻していました。それで、知り合ったわけです。卒業後、それぞれ就職したんですが、グループ展をやってみようということになったんです。その後、アートユニットが流行っている頃だったので、せっかくなので、僕らも何かユニット名をつけようということになりました。1991年頃の話です。
司会:
どんなスタンスでこのユニットをはじめたのですか?
ふじわら:
最初は普通に作品づくりをしていたのですが、なかなか日の目を見ることがなくて、それでいつも美術界の最下層にいるなあという想いがあって、お菓子に対して駄菓子というものがあるのなら、美術に対して駄美術というものがあってもいいのではないか、そんな発想からの活動になります。
司会:
長年の活動が実って、最近、ようやく世間的にもブレイクしている感がありますね。
ふじわら:
僕らの活動はすぐに軌道に乗ったわけではなくて、最初は、いろいろな美術コンペなんかはほとんど通りませんでしたから。それで、あるとき「駄美術宣言」をした。それ以降ですね、活動がやりやすくなって、受け入れてもらえるようになったのは。元々は、僕らがつくっているものは、美術的には美術の作品ジャンルとしてくくってもらえない雰囲気がありましたからね。
司会:
現代美術二等兵という名前はどこから来ているものなのですか?
籠谷:
現代美術の二等兵ということで、一番底辺の方で竹槍をついているイメージから来ています。最下層だけど、現代美術の最前線にいる。そういうユニットであれたらいいなという想いがありますね。
司会:
おふたりのスタンスとしては、実はアーティストを職業にして生計を立てているわけではないんですよね?
ふじわら:
はい。よく勘違いをされる方がいるんですけど、僕たちはあくまでも会社員をやりながら、ある程度の収入を得つつ作家としての活動もしているという感じになります。その方が、長く続けられるだろうし、いいかなあという想いがあったんです。
司会:
典型的なアーティストというのは、貧乏でも好きなことしているからいいんだ、みたい考え方があると思うんですけど、そういうのがおふたりにはないんですね。
籠谷:
僕らの場合、ふつうの生活をふつうにして、その上で、作品をつくっていくという感じです。ウィークデーは週5日は働いて仕事の後とか、週末を使って製作を行っています。案外、時間を有効に使えばできるものですよ。でも、これはひとりで続けていたら長続きはしなかったと思うのですけど、一応、パートナーがいるし、個展も年に一度はやらないといけないしということで、抜けられないシステムのようなものをつくってしまったわけです(笑)。
司会:
ちなみに、おふたりの製作場所というのも、いわゆるアーティストのものは違うと聞いています。
ふじわら:
そうですね。子供もいますから、子供が騒ぐときにはすぐに隠せるようにしとかないといけないと思っています。だから、普段は、普通のサラリーマンの生活空間になっていて、製作するときだけ、そそくさと道具や材料をひっぱり出してくるという感じです。
司会:
なるほど。ところで、おふたりのアイディアの数というのは相当数にのぼると思うのですけど、ボツになったアイディアも多いみたいですね。
ふじわら&籠谷:
はい。ボツになったアイディアというのは、割と多いですね。例えば、次のようなものがあります。
四隅に忍者
四隅に忍者がいて、煙がもわっと出てくるようなものをつくりたかったのですが、仕組み的にどうやっていいかわからなかった。下手すると、火事になってしまいますしね(笑)。
百円鉄一
百円玉を使って、点描みたいな形で欽ちゃんを描けたら面白いなあと思っていたんですけど、予算の2万円くらいじゃとても描けないということがわかってしまって、諦めてしまいました。
大阪HEP FIVE、観覧車の映像作品
観覧車が開いたら、いろいろな人たちが出てくるパターンの映像をつくりたかったんです。ビートルズの来日シーンや、未知との遭遇、歌舞伎役者、開いたら満員、スキーのリフトからの降りる人など、30〜40パターンくらいは、できそうだなぁと思っているんですけど、実現できていませんね。まず、貸し切りしなきゃならないというところで、止まってしまっています。
サトちゃんシリーズ
佐藤製薬の象のマスコットを使ったシリーズでして、象のマスコットが人形じゃなくて、本当にアルバイトとして雇われていたらどうかなぁと想像したシリーズですね。実は、これは実際につくったこともあるんですよ。
目指せ!世界一
これは スピード社の水着のレーザーレーサーをカエルに履かせてみたら、面白いかなと思ったアイディアです。でも、製作を終える頃には、もう旬が過ぎてしまっている可能性もあると考えてやめました。
私の星座展
星座というのは、あれは人間が勝手に線と線を結んでつくったもの。だったら、こっちで勝手にドラエモン座とかピカチュウ座とか、そういうものをつくっていったらいいんじゃないかなと思ったわけですね。
ざっと、そんな感じのボツアイディアがありましたね。これからもボツアイディアはどんどん出てくると思います(笑)。
司会:
でも、商品化されているものもちらほらあるんですよね。
籠谷:
はい。こけしアレーが代表的なもので、インテリアとしても部屋に置いておけて、体を鍛えることもできるというものです。それから、スカンクが放屁をする瞬間をデザインしたブックエンドがあります。どちらもデザイン系のインテリアショップでは、そこそこ売れているということで、僕らとしては喜んでいますね。
ふじわら: 今後も、そういう変なアイディアを形にして、商品にしていけたらなぁという風には思っています。
現代美術二等兵のおふたり、どうもありがとうございました!ふたりの発想がどういう生活や発想から生まれてくるのか、少しだけわかったかもしれません。
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