「ピコとピータ」について
子供のときにセキセイインコを飼っていました。
最初に飼った水色のインコは、わずか2週間ほどで天国に旅立ってしまい、
泣いている私に小鳥屋のおじさんが「丈夫そうなのを選んでやるからな!」と選んでくれたのが、
黄色い頭と、黄緑色と黒の羽をもつ、「ピコとピータ」でした。
この色は、オーストラリア大陸で何十、何百羽もの群れで住む、野生種のセキセイインコと同じ色になります。
丸っこく愛らしいピコと、三白眼でコワモテのピータ。
二羽はとても仲良しで、いつもピータがピコにぴったりくっついていました。
ピコは私をあまり怖がりませんでしたが、ピータは手を伸ばすと暴れ、過剰に怖がりました。
子供の私は手に乗せてみたい思いもありましたが、
必要以上に近づかないようにし、ピコとピータの穏やかで幸せな時間と空間を眺めていました。
ピコが病気で旅立ってから、一羽になったピータが不憫で、順番に雌の二羽を迎えました。
しかしながら、それはエゴというもの。
ピコを思い続けていたであろうピータと、嫌われて短命となってしまった二羽には、申し訳ないことをしました。
ずっとあとになり教えていただきましたが、セキセイインコは一夫一妻制なのだそうです。
その後、ひとりとなったピータの、私への拒絶ぶりはますます凄まじく、
青菜を補充するためにカゴの中に手を入れると、
奇声を発しながら暴れ、顔を近づけると、止まり木の反対側へ即座に移動。
それでも晴れた日に鳥かごをベランダに置くと、ピータは機嫌良さそうに小鳥たちの鳴き声に呼応し、
声高らかに鳴いていました。狭いカゴから飛び立ちたかったのかもしれません、、
ピータが永遠の眠りについたとき、ピータは初めて私の手の中に入りました。
小学3年生だった私も、高校3年生になっていました。
拒むことのない、穏やかな表情をしたピータに顔を近づけ、
ピータの匂いをずっとずっと嗅ぎながら、涙が止まりませんでした。
ピコとピータたちが眠る実家の庭も、もうありません。
巨大なインコは、15羽、30羽、50羽、、ときには100羽、、
何かに引っ張られるように、どんどん増えていきました。
一人で制作していると、群れで生きるインコの領域に、ようやく入ることが出来た感覚を覚えます。
生涯私に慣れなかったピータの存在こそが、
私を引っ張り、支配しているのかも、いえ、してくれているのかもしれません。
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